高山城高山宿史跡保存会の紹介

1.設立趣旨

土岐津町高山地区ならびに土岐口地区は美濃源氏の時代から戦国時代、江戸時代、明治時代、そして今日に至るまで多くの武将や町人が活躍した場所であり数々の史跡が残されています。

 

昨今、ボランティアの皆様のおかげで土岐高山城跡周辺の整備が進み土岐津町内外の方々の関心が集まることとなりました。これを機に土岐市土岐津町高山ならびに土岐口の史跡を今一度見直し、整備し、後世に伝えていくことが私たちに課せられた使命であるという認識の下、平成23年4月「高山城高山宿史跡保存会」を立ち上げました。

2.会の目的

  1. 歴史的事実の検証ならびに史跡の保存整備(史跡の消滅を防ぐ)
  2. 歴史的文化の復興(坐禅、茶道、陶器など古来の文化の見直し)
  3. 歴史文化の次世代への伝承(若い世代に故郷の良さを知ってもらう)
  4. 活力ある故郷の創出(子供たちが自慢できる故郷にする)
  5. 観光交流人口の増加をめざす(にぎわいを創出する)

活動レポート

1.地域の状況

高山城高山宿史跡保存会(以下、「保存会」と表します)の「高山」は飛騨高山の高山市ではなく、同じ岐阜県の土岐市にある地区の名称です。土岐市の高山地区は市の中央部に位置し、土岐川の南岸から土岐市中央丘陵につながる平地および丘陵地に立地しています。JR土岐市駅からは1kmほどの距離にあり、周辺には飲食店やコンビニなどの商業施設が点在しています。2013年3月末で696世帯、1,822人が暮らしています。土岐市は古くから美濃焼(陶磁器)産業が伝統・基幹産業として発展し、高山地区においても陶磁器産業が主産業となっています。

 

2.活動のきっかけ

高山地区は鎌倉時代以前より戦国、江戸、明治時代にかけ、多くの武将や町人が活躍した場所であり、中でも戦国時代には織田信長と武田信玄、勝頼親子との領土争いの境界線となり幾度となく合戦が繰り広げられました。また、江戸時代には尾張名古屋と中山道を結ぶ「下街道」の宿場町としても栄えました。明治以降は土岐郡役所が置かれるなど周辺地域の中心として重要な役割を果たしました。しかし、地場産業である陶磁器産業の発展に伴い宿場町としての古い街並みなど伝統的なまちの姿が失われてきました。今日では、景気の低迷により陶磁器産業も影響を受け地域の活力が低下し、住民の郷土への愛着心も薄れてきてしまいました。

 

一方で、失われつつある地域の歴史遺産を何とか保存したいという思いをもった有志により高山城跡周辺の整備を行うボランティア活動が進んできました。こうした活動が広まり、地域住民をはじめとした周囲の関心も高まってきたことから、地域の史跡を今一度見直し、保存・整備を行い、後世に伝えていくことを目的とした「高山城高山宿史跡保存会」を平成23年4月に立ち上げることとなりました。

 

保存会では主に以下の5つの活動を行っています。

 

  1. 歴史的事実の検証及び史跡の保存・整備
    歴史勉強会や講演会を開催し、地域の歴史文化の検証を行うとともに、史跡の保存・整備を行います。あわせて史跡の活用や景観整備も行います。
     
  2. 歴史的文化の復興
    歴史検証・史跡整備だけでなく、それを取り巻く文化も復興する必要があることから、座禅や茶道など古来の文化を見直し、普及する活動を行います。
     
  3. 歴史文化の次世代への伝承
    前述の歴史勉強会などを通じて青少年に対する歴史教育活動を行い、地域の歴史文化を広め、次世代へ伝承していける取り組みを行います。
     
  4. 活力ある故郷の創出
    子どもたちが自慢できる故郷となるよう街並みの整備を進め、地域の活力を創出する生涯学習活動に取り組みます。また、活動内容を周知し、地域住民の意識の高揚を図ります。
     
  5. 観光交流人口の増加
    賑わいの創出と経済的な効果を期待し、イベントの開催、交流拠点づくりや特産品の開発などを進めます。
     

3.これまでの活動内容

保存会では、まずメンバーでできることから活動をやっていこうということで取り組みを始めました。

 

平成23年度は観光交流人口の増加を図り、地域住民の郷土に対する意識を高揚させるため「散策マップ」を発行し、現地の史跡や散策路を案内できるような「案内看板」を設置しました。あわせて、下街道沿いに宿場町の雰囲気を出すことができるよう高山宿と明記した「木製灯篭」を設置したり、高山城跡に「東屋」を設置したりするなどの史跡の整備を行いました。また自然保護にも力を入れ高山城跡周辺の里山林の整備も始めました。こうした活動が認められ、JR東海が主催する「JRさわやかウォーキング」のコースに高山地区が組み込まれ、多くの方に来訪いただける機会が増えました。

 

また、保存会だけの活動では限度があることや幅広く活動を展開していくため、岐阜県及び土岐市の支援・助言を受け、行政と協働によるまちづくりを進めることとなりました。

 

平成24年度に入り、活動も2年目となりました。今後の保存会のあり方などを考えるため、月1~2回程度メンバーが集まりまちづくり計画の策定会議を行いました。その会議の中で、メンバーから「高山地区は戦国時代の古戦場であったことから、それを活かして戦国時代の合戦を再現させたイベントをやってはどうか」と提案があり、早速実現に向けて検討を重ね、そのための準備を進めました。その結果、ふるさとの歴史を学び次世代に伝承するとともに、観光交流人口の増加や賑わいの創出を図ることを目的とした「高山城戦国合戦まつり」を平成24年11月に開催することができました。

 

開催にあたってはメンバーの協力だけでなく、地域の関係者やボランティアスタッフなど多くの方々の支援や励ましをいただきました。祭りの内容としては、武田軍と織田軍に分かれた出陣式にはじまり、親子400名を超える参加者による武者行列と親子ふれあい戦国合戦、長篠・設楽原鉄砲隊による火縄銃の実演や戦国バサラ合戦などを実施しました。

 

1回目ということもあり、知名度を上げるため名古屋おもてなし武将隊に出演依頼し、祭りを盛り上げていただきました。あいにく天候には恵まれませんでしたが、約6,000人の来訪者があり、来訪者からは次年度以降も開催してほしいといった声を多くいただきました。その他の活動としては、高山城跡に物見やぐらを設置、区民会館を宿場町の旅籠をイメージした外観に改築、区民会館前の旧消防屯所を休憩所に改築するなどの活動を行ってきました。

 

 

平成25年度はもっと多くの人に活動を知ってもらう必要があると考え、メンバーによるオリジナルの「土岐高山城戦国武将隊」を結成しました。武将隊は地域の内外のイベントなどに参加し、高山地区のPRを行っています。戦国合戦まつりについては今年度も継続して行うこととしており、昨年以上の盛り上がり、来訪者の増加を期待しています。

 

また各地で高山地区のまちづくりに関する講演会を開催し、秋には「下街道ウォーキング」を企画するなど、新たな展開を進めています。また、発足以前より行っている草刈りなどの史跡整備や歴史勉強会などの活動も継続して行っています。

 

 

4.現在までの成果

保存会は平成23年4月の発足以降、これまでの活動を継続するとともに、史跡整備や周辺の景観整備、各種イベントの開催など年々活動範囲を広げています。これらの活動により高山地区の知名度が向上し、来訪者の増加や地域の活性化につながっています。また、保存会では歴史文化を活かしたまちづくりを進める中で、地域の自然環境を活かした里山林の整備もあわせて行っています。高山城跡は眺望に優れており、その周辺には紅葉の名所でもあり104体の石仏が安置された穴弘法などの観光スポットもあることから、地域を散策できるウォーキングコースを整備することで、散策される方の健康増進やウォーキングに訪れた方々に地域の歴史文化や自然環境に触れてもらえる機会を提供しています。対外的には保存会のホームページと武将隊のフェイスブックを開設し、情報発信を行っています。

 

そして何よりも、イベントの開催だけでなく、歴史勉強会を開催したり機関紙を発行したり、高山城跡や高山宿周辺の景観整備を進めることにより、地域の歴史文化を視覚的・感覚的に表現することで地域住民のふるさとへの愛着心、郷土意識が高まってきています。

 

5.今後の課題

これまで各種の取り組みを実施してきた結果、来訪者が次第に増加してきておりますが、今後は、土岐市及び地域の特産品である陶器、地域で醸造される味噌や里山整備により生じる余剰竹を使用した竹炭などを用いて、地域資源を活かした特産品の開発を進め、エリア内に土産品の店舗や飲食店などの整備を進めたいと考えています。

 

また、保存会を継続していくためにはメンバーや参加者の確保が不可欠です。特に現在は若者や女性の参加が少ない状況です。そこで、生涯学習を活用した住民参加型のまちづくりを進めるため、岐阜大学の益川浩一先生をお招き、ワークショップや講演会を開催し、若者や女性の参画をいかに進めるかといったことや有効な情報発信などの方法について話し合いや取り組みの検討を進めることにしています。あわせて、地域の歴史文化を後世に引き継いでいくためには子どもの頃からの教育や歴史文化に触れる機会が重要となるため、子ども向けの歴史勉強会や子どもが参加できる「甲冑製作教室」などの社会教育活動も今後実施していきたいと考えています。

 

 

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